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セールのチラシや通販サイトで「通常価格5,980円→3,980円」のように、2つの価格を並べた表示を見かけます。お店の側から見ると「どの価格なら『通常価格』と書いてよいの?」と迷うところです。
この記事では、消費者庁が公表している「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン、平成12年6月30日公正取引委員会、平成28年4月1日消費者庁改定)と、消費者庁の「二重価格表示」のページをもとに、二重価格表示の基本と、過去の販売価格を比べるときの考え方を5つのポイントにまとめます。後半の、セール前に確かめたいことのリストは、この記事の提案です。
※この記事は一般的な情報の整理です。個別の表示が景品表示法に違反するかどうかは事案ごとに判断されます。具体的な判断は、消費者庁の案内や専門家への相談で確かめてください。
二重価格表示とは
2つの価格を並べる表示
価格表示ガイドラインでは、二重価格表示は、事業者が自分の販売価格に、その販売価格よりも高いほかの価格(比較対照価格)を併記して表示するものとされています。
適正なら役に立つ面もある
ガイドラインでは、二重価格表示は、その内容が適正な場合には、一般消費者の適正な商品選択と事業者間の価格競争の促進に役立つ面があるとされています。一方で、比較対照価格の内容について適正な表示が行われていない場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあるとされています。
何と比べるかで考え方が変わる
比較対照価格には、過去の販売価格、将来の販売価格、希望小売価格、競争事業者の販売価格などがあり、消費者庁のページでは、それぞれについて注意点が示されています。
二重価格表示で押さえる5つのポイント
ここでは、価格表示ガイドラインと消費者庁のページから、二重価格表示で押さえておきたい点を5つにまとめます。
1. 同じ商品どうしで比べる
ガイドラインでは、同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いて表示を行う場合は、不当表示に該当するおそれがあるとされています。商品の同一性は、銘柄、品質、規格等からみて同一とみられるか否かで判断されるとされ、新品と中古品、キズ物、旧型の物などは同一の商品とは考えられないとされています。また、衣料品等のように色やサイズの違いがあっても同一の価格で販売される商品は、同一の商品に該当すると考えられるとされています。
2. 「最近相当期間」の価格なら問題になるおそれはない
消費者庁のページでは、同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格とする場合には、不当表示に該当するおそれはないとされています。
3. 目安はセール開始前の8週間の過半
ガイドラインでは、一般的には、セール開始時点からさかのぼる8週間(商品の販売期間が8週間未満の場合はその期間)において、その価格で販売されていた期間が、商品が販売されていた期間の過半を占めているときには、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とみてよいと考えられるとされています。
4. 2週間のただし書きがある
ただし、その価格で販売されていた期間が通算して2週間未満の場合や、その価格で販売された最後の日から2週間以上経過している場合は、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえないと考えられるとされています。
5. 当てはまらない価格は内容を正確に示す
「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない価格を比較対照価格に用いるときは、その価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるか等、その内容を正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがあるとされています。
5つのポイントの早見表
| ポイント | ガイドラインの考え方 |
|---|---|
| 同じ商品 | 同一ではない商品の価格との比較は不当表示のおそれ |
| 最近相当期間 | その価格との比較は不当表示のおそれはない |
| 8週間の過半 | セール開始前8週間のうち過半の期間の販売が目安 |
| 2週間 | 通算2週間未満、最後の販売から2週間以上は除く |
| 正確な表示 | 当てはまらない価格は時期・期間などを正確に示す |
表は、価格表示ガイドラインと消費者庁の「二重価格表示」のページにもとづきます。
過去の価格以外と比べるとき
将来の販売価格
消費者庁のページでは、表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき(実際に販売することのない価格であったり、ごく短期間のみその価格で販売するにすぎないなど)には、不当表示に該当するおそれがあるとされています。ガイドラインでは、将来の価格として表示された価格で販売することが確かな場合以外に、将来の販売価格を用いた二重価格表示を行うことは適切でないと考えられるとされています。
タイムサービス
ガイドラインでは、一定の営業時間に限って価格を引き下げたり、生鮮食料品等の売れ残りを避けるために一定の時間経過後に価格を引き下げたりする場合に、当初の表示価格を比較対照価格とする二重価格表示は、通常は不当表示に該当するおそれはないと考えられるとされています。
希望小売価格と他店の価格
沖縄県が作成した周知チラシでは、ガイドラインのポイントとして、希望小売価格はメーカーにより設定されあらかじめカタログなどにより公表されている価格でなければ不当表示のおそれがあり、競争事業者の販売価格は、相当数の事業者の実際の販売価格を正確に調査することなく表示する場合に不当表示のおそれがあると紹介されています。
不当表示のおそれがある例
「当店通常価格」の使い方
ガイドラインでは、不当表示に該当するおそれのある表示として、実際に販売されていた価格よりも高い価格を、「当店通常価格」等、最近相当期間にわたって販売されていた価格であるとの印象を与える名称を付けて比較対照価格に用いることが挙げられています。
販売実績の短い価格
販売実績の全くない商品やセール直前に販売が開始された商品など、短期間しか販売した実績のない商品の価格を、同じような名称を付けて比較対照価格に用いることも挙げられています。
セールのために作った価格
ガイドラインでは、セール実施の決定後に販売を開始した商品の二重価格表示については、セール前価格は実績作りのものとみられることから、セール前価格で販売されていた期間を正確に表示したとしても、不当表示に該当するおそれがあるとされています。
8週間の考え方を例で見る
沖縄県が作成した二重価格表示の周知チラシには、ガイドラインの考え方を図で示した事例が載っています。ここでは、その事例の内容を文章で紹介します。
過半を占める例
チラシの事例1では、セール開始前の8週間のうち、800円で販売した期間が過半を占めるので、800円を比較対照価格として二重価格表示は可能と説明されています。
過半を占めない例
事例2では、700円で販売した期間が8週間の過半を占めないため、700円を比較対照価格にできないと説明されています。
最後の販売から2週間以上たった例
同じ事例2では、800円で販売した期間は8週間の過半を占めているものの、最後に800円で販売したときから2週間以上経過しているため、800円を比較対照価格にできないと説明されています。
違反事例として紹介されているもの
チラシには、「当店通常価格」としていた価格が実は発売当初の販売価格で、セール開始前8週間のうち過半を占める期間は別の価格で販売していた例や、セールを繰り返して常時セール価格で販売していたのに「当店通常価格」を表示していた例が紹介されています。
| 事例 | チラシでの説明 |
|---|---|
| 8週間の過半で販売 | 比較対照価格にできる |
| 過半を占めない | 比較対照価格にできない |
| 最後の販売から2週間以上 | 比較対照価格にできない |
セール前に確かめたいことのリスト
ここからは、価格表示ガイドラインの考え方をもとにした、この記事の提案です。
価格の記録を残す
いつからいつまで、いくらで販売していたかを記録しておくと、セール開始前8週間のうち、どの価格で何週間販売していたかを確かめやすくなります。
カレンダーに書き出す
セール開始日から8週間さかのぼった期間をカレンダーに書き出し、価格ごとに色分けすると、過半を占める価格が見えやすくなります。最後にその価格で販売した日から2週間以上たっていないかも、あわせて確かめましょう。
表示の名称を確かめる
「当店通常価格」「セール前価格」などの名称は、最近相当期間にわたって販売されていた価格であるとの印象を与えることがあります。名称と実際の販売の記録が合っているかを、セール前に見直しておきましょう。
新商品のセールは慎重に
販売を始めて間もない商品は、8週間に満たない販売期間で考えることになります。その価格で販売されていた期間が通算2週間未満の場合は、最近相当期間にわたって販売されていた価格とはいえないと考えられるとされているので、比べる価格を使うかどうかを慎重に考えましょう。
迷ったら相談する
表示が問題ないか判断に迷うときは、消費者庁の案内を確かめたり、専門家に相談したりすることを検討しましょう。
二重価格表示のよくある質問
実際に売れた実績が必要?
ガイドラインでは、「販売されていた」とは、事業者が通常の販売活動においてその商品を販売していたことをいい、実際に消費者に購入された実績のあることまでは必要ではないとされています。
「相当期間」は連続でないとだめ?
ガイドラインでは、「相当期間」は常に連続した期間である必要はなく、断続的にセールが実施される場合であれば、比較対照価格で販売されていた期間を全体としてみて評価するとされています。
色違いやサイズ違いは同じ商品?
ガイドラインでは、衣料品等のように色やサイズの違いがあっても同一の価格で販売される商品は、同一の商品に該当すると考えられるとされています。
ガイドラインはいつ作られた?
価格表示ガイドラインは、平成12年6月30日に公正取引委員会が定め、その後の改定を経て、平成28年4月1日に消費者庁が改定したものとして公表されています。
通販サイトでも同じ?
価格表示ガイドラインは、店頭やチラシに限らず、事業者が一般消費者に対して行う価格表示について考え方を示したものです。通販サイトでセールをする場合も、比較対照価格の内容が適正かどうかを確かめておきましょう。
生鮮食品は?
ガイドラインでは、野菜、鮮魚等の生鮮食料品は、一般的には商品の同一性を判断することが難しいと考えられるとされています。
二重価格表示のルールを知ってセールを準備しよう
二重価格表示は、販売価格より高いほかの価格を並べる表示です。同一の商品の「最近相当期間にわたって販売されていた価格」と比べる場合は不当表示のおそれはないとされ、目安はセール開始前8週間の過半と、2週間のただし書きです。当てはまらない価格を使うときは、その内容を正確に示すことが求められます。価格の記録を残して、セールの準備に役立てましょう。