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お店のXやInstagramで「フォロー&いいねで抽選プレゼント」を企画するとき、まず気になるのが「景品はいくらまでなら大丈夫なのか」という点です。Xでも、「インスタのプレゼント企画にも、景品表示法で景品の上限がある」と気づいた店主の投稿や、プレゼント企画の前に「購入や来店が条件なら景品表示法」を確認しよう、という呼びかけが見られました。一方で、「1万円の化粧水を買った方全員に5,000円の美容液プレゼント」は違反になる、という具体例を挙げて注意を促す投稿もあります。
結論から言うと、SNSのフォローや「いいね」だけで応募でき、景品を郵送するような企画には、景品表示法の景品規制はかかりません。ただし、応募や受け取りのどこかに購入や来店が入り込むと、とたんに「一般懸賞」や「総付景品」の上限がかかります。この記事では、消費者庁の「景品規制の概要」と「景品に関するQ&A」、ステルスマーケティングの運用基準、法律事務所などの解説をもとに、SNSキャンペーンで上限がかかる場合とかからない場合、上限額の計算方法、告知や規約で気をつける点を整理しました。
判断の分かれ目は「購入や来店につながるか」:消費者庁Q&Aの事例
景品表示法で規制される「景品類」は、消費者庁の説明によると、顧客を誘引するための手段として、事業者が自分の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、物品や金銭などの経済上の利益です。ポイントは「取引に付随して」の部分で、消費者庁は、取引を条件としない場合でも、提供が取引の相手方を主たる対象として行われるときは取引に付随する、と説明しています。応募しようとする人が商品やサービスを買うことにつながる蓋然性が高い場合も、取引に付随すると認められます。
反対に、新聞、テレビ、雑誌、ウェブサイトなどで企画を広く告知し、購入や来店を条件とせず、はがきやウェブサイト、メールなどで誰でも応募でき、抽選で金品が当たる企画には景品規制が適用されません。これが一般に「オープン懸賞」と呼ばれるものです。オープン懸賞の最高額は以前は1,000万円とされていましたが、2006年(平成18年)4月に撤廃され、今は具体的な上限額の定めがありません。
消費者庁の「景品に関するQ&A」には、SNSやホームページで応募できる懸賞の事例がまとまっています。主なものを表にしました。
| Q&Aの事例 | 消費者庁の判断 | 理由 |
|---|---|---|
| Q18:アカウントをフォローし「いいね」で応募、景品は郵送 | 景品規制の対象外 | フォローやいいねは通常、購入に直ちにつながらず、受け取りに来店も不要 |
| Q19:フォロー+指定ハッシュタグで投稿、商品の画像や使用感を投稿すると当選確率2倍 | 一般懸賞の規制対象 | 商品を購入する蓋然性が高い |
| Q20:友達登録で応募、景品は店舗に来店して受け取り | 総付景品の規制対象 | 受け取りに来店が必要で、来店すればもれなくもらえる |
| Q21:ホームページから誰でも応募、当選者に自店の値引券をメールで提供 | 正常な商慣習に照らして値引と認められれば対象外 | 来店は必要だが、自店で使う値引券は値引にあたりうる |
| Q22:誰でも応募できるが、応募要領を商品Aのパッケージにも印刷 | 一般懸賞の規制対象 | 商品Aの購入者を主たる対象とみられる。取引に付随しない方法を併用していても同じ |
| Q23:購入不要で応募、ただしカーナビを受け取るには自動車の購入が必要 | 総付景品の規制対象 | 購入すればもれなくもらえる |
| Q24:誰でも応募、景品は他社テーマパークのペアチケット(運営会社は関与なし) | 景品規制の対象外 | 来園は必要だが、テーマパーク側の取引に付随した提供ではない |
表のとおり、応募の時点では購入を条件にしていなくても、当選確率の優遇、商品パッケージでの告知、景品の受け取り方法などで判断が変わります。弁護士法人吉川綜合法律事務所の解説も、応募の時点だけでなく、告知から景品の受け取りまでに購入や来店が必要になる場面がないかを確認するよう勧めていました。なお、消費者庁のQ&Aは、無料の会員登録を求めるだけでは、通常、取引に付随する提供にはあたらないとしています(Q15)。
上限がかかるときの金額:一般懸賞・共同懸賞・総付景品
購入者を対象にした抽選や、来店者全員へのプレゼントなど、景品類にあたる場合は上限額があります。消費者庁の「景品規制の概要」による基本の数字は次のとおりです。
| 種類 | どんな企画か | 1つあたりの最高額 | 総額 |
|---|---|---|---|
| 一般懸賞 | 購入者などを対象に、抽選、じゃんけん、クイズの正誤、競技の優劣などで当選者を決める | 取引価額5,000円未満は取引価額の20倍、5,000円以上は10万円 | 懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 共同懸賞 | 商店街の中元・歳末セールなど、一定の地域の事業者の相当多数が共同で実施 | 取引価額にかかわらず30万円 | 懸賞に係る売上予定総額の3% |
| 総付景品 | 購入者や来店者にもれなく、または先着順で提供 | 取引価額1,000円未満は200円、1,000円以上は取引価額の10分の2 | 定めなし |
このほか、新聞業、雑誌業、不動産業、医療用医薬品業・医療機器業・衛生検査所業には、業種別の景品告示があり、一般のルールとは別の制限が設けられています。Xでは宅地建物取引士の試験勉強として、不動産業の公正競争規約の数字を紹介する投稿もありました。自社の業種に別のルールがないかは、最初に確認しておきましょう。
取引価額の決め方:購入額、来店のみ、複数の商品
上限額の基準になる「取引価額」は、消費者庁のQ&Aによると、景品類の提供を受けるために必要な取引のうち最低の金額です。消費税込みの価格で考えます(Q60)。たとえば税込み500円の商品Aの購入者を対象にするなら、取引価額は500円です(Q61)。この場合、一般懸賞の最高額は20倍の1万円、総付景品なら取引価額が1,000円未満なので200円が上限になります。
購入額の多少を問わずに購入者全員を対象にする場合や、購入を条件とせずに来店者を対象にする場合、取引価額は原則として100円です(Q63、Q72)。ただし、その店で通常行われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、その最低額を取引価額にできます。逆に、対象商品の最低価格が明らかに100円を下回るときは、その価格が取引価額になる点に注意してください。ネット上の解説には「100円未満なら一律100円」と書いているものもありますが、消費者庁のQ&Aは、最低価格が明らかに100円を下回る場合はその価格による、という立場です。
来店者向けの企画で「店内の何が通常の取引か」も問題になります。Q73は美容院の例で、店内に飲料の自動販売機があっても、通常行われる取引は美容施術なので、取引価額は飲料ではなく美容施術の最低料金になると答えています。対象商品が複数ある場合も同じ考え方で、Q64の遊園地の例では、入場券が大人2,000円、中高生1,500円、小学生1,000円なら、取引価額は最も安い1,000円です。Q65は、100円・200円・300円の3商品のどれを買っても応募できる場合でも、平均の200円ではなく最低の価格で考えるとしていました。
先着順のプレゼントは、偶然性や優劣で相手を決めるわけではないので、原則として懸賞ではなく総付景品です(Q112)。ただし、ウェブサイトや電話での申込順に配る場合などで、申し込む時点ではもらえるかどうか分からず、実質的に偶然で決まるのと同じだと認められるときは、懸賞とみなされることがあります。また、来店者全員に配る場合でも、景品の価額に差があってどれがもらえるか分からないなら、くじと同じ扱いになりうるとされています(Q89)。
景品の価額と総額2%の計算、値引券を配るとき
景品の価額は、景品と同じものが市販されていれば、提供を受ける人がそれを通常購入するときの価格で考えます。市販されていない非売品は、入手価格や類似品の市価などから、通常購入するとしたときの価格を算定します(Q76)。景品の価額も消費税込みです(Q77)。曜日によって料金が違うサービスの利用券を景品にする場合は、平均ではなく、最も高い曜日の料金でも上限の範囲に収まっている必要があります(Q78)。
一般懸賞では、1つあたりの最高額と、総額の両方を守らなければなりません。総額の基準になる「懸賞に係る売上予定総額」は、懸賞を実施する期間中の対象商品の売上予定総額のことです(Q86)。丸の内ソレイユ法律事務所の解説は、期間中の売上予定総額が500万円なら、景品総額の上限は2%の10万円になる、という計算例を示していました。1つ2万円の景品は最高額の面では取引価額1,000円の企画で問題なくても、売上予定500万円の企画なら5個までしか用意できない、ということです。消費者庁のQ&Aでも、1回目の抽選に外れた人を対象にダブルチャンスの抽選をする場合、最高額はそれぞれ取引価額の20倍まで、総額は2回分の景品をすべて合算して売上予定総額の2%以内に収める必要がある、と説明しています(Q94)。
値引券やクーポンには特別な扱いがあります。自店の取引で、取引通念上妥当な基準に従って代金を減額することは、正常な商慣習に照らして値引と認められれば景品類に含まれません。次回以降の買い物で使える割引券や、支払いに充てられるポイントも同様です(Q37、Q39)。ただし、対価の減額であっても抽選で配る場合は値引とは認められず、一般懸賞の規制の対象になります。Q46は、500円以上の購入者に抽選で値引券を配る例で、値引券の最高額は20倍の1万円、総額は売上予定総額の2%以内とし、「〇%値引券」のように割引率で示す場合は割引額の上限を設けないと規制の範囲を超える可能性がある、と注意しています。SNSで「抽選で30%オフクーポン」を配る企画を考えるなら、上限額を決めておくのが安全です。
小さなお店のよくある企画に当てはめると
ここまでのルールを、小さなお店がSNSでよく行う企画に当てはめてみます。金額はすべて説明のための仮の例です。
- 「店頭でフォロー画面を見せた人にドリンク1杯サービス」。 購入を条件とせず来店者にもれなく配るので、総付景品です(Q111)。取引価額は原則100円なので上限は200円になります。ただし、お店で通常行われる取引の最低額が100円を超えると認められれば、その額を取引価額にできます。たとえば最も安いメニューが400円の喫茶店でも、1,000円未満なので上限は200円のままです。「注文した人に」と条件を付けるなら、その注文の最低額が取引価額になります。
- 「購入者がハッシュタグ付きで写真を投稿すると、抽選でギフト券」。 購入が前提の抽選なので一般懸賞です。対象が1,500円のケーキなら最高額は20倍の3万円で、総額は期間中の売上予定総額の2%以内に収めます。購入不要で誰でも参加できる形に変えれば、Q18と同じくオープン懸賞として扱える可能性がありますが、Q19のように「商品写真なら当選確率アップ」といった優遇を付けると一般懸賞に戻ります。
- 「写真コンテストで最優秀賞に賞品」。 当選者を作品の優劣で決めるのも、景品表示法上の「懸賞」です。参加に購入が必要なら一般懸賞の上限がかかり、Q28は参加費5,000円のマラソン大会の賞金について、最高額は10万円、総額は売上予定総額の2%までとしていました。購入も来店も不要で誰でも応募できるコンテストなら、景品規制はかかりません。
- 「先着100名にオリジナルグッズ」。 来店や申込みの先着順は懸賞ではなく、原則として総付景品です(Q112)。購入者が対象なら、その購入の最低額をもとに200円か2割の上限を確認します。
- 「商店街の加盟店が共同でSNS抽選」。 一定の地域や商店街の相当多数の事業者が共同で行うなら、共同懸賞として最高額30万円、総額3%まで認められます。吉川綜合法律事務所の解説によると、商店街での実施は中元・年末などの時期に年3回、年間通算70日以内が限度で、協賛する会社が複数あるだけでは共同懸賞にあたらないとされていました。
告知・規約・投稿で気をつけること
上限額を守っていても、告知の書き方や当選者の扱い、参加者に投稿してもらう内容によっては、別の問題が出てきます。オープン懸賞として景品規制がかからない企画でも、表示のルールやSNS各社のルールは別にかかる点を押さえておきましょう。
当選者数の表示、応募規約、ステマ規制との関係
消費者庁のQ&Aは、抽選の方法そのものについて景品表示法に定めはなく、抽選の手順は実施者が決めてよいとしています(Q87)。ただし、あらかじめ告知した方法とは別の方法で当選者を選ぶことは参加者に疑念を抱かせるので適切ではなく、実際の当選者数が告知した当選者数に満たないときなどは、取引条件に関する不当表示(景品表示法第5条第2号)にあたるおそれがある、と書いています。「抽選で10名様」と告知したなら、10名に届けることが前提です。応募が少なかったからといって当選者数を減らすと、景品規制とは別の問題になる点を覚えておきましょう。
応募規約もトラブルを防ぐ大切な道具です。Xでは、「懸賞用アカウントは応募無効」「主催側がふさわしくないと判断したアカウントの当選は無効」といった条件はよく見るが、有料会員を優先するなら規約に明示すべきだ、という参加者側の投稿がありました。当選の条件や優先の有無、応募期間、当選連絡の方法と返信期限、景品の発送時期を、告知の時点で分かるように書いておくと、参加者の不信を招きにくくなります。前述のQ19のように、商品の画像を投稿した人の当選確率を上げる仕組みは、それ自体が一般懸賞の規制対象になる理由になるため、優遇の条件を足す前に上限額を計算し直しましょう。
参加者にハッシュタグ付きで投稿してもらう企画では、2023年10月から施行されているステルスマーケティング規制との関係も気になるところです。消費者庁の運用基準は、事業者が第三者の表示に関与していても、客観的な状況から第三者の自主的な意思による表示内容と認められれば事業者の表示にはあたらないとし、その例として、第三者がSNS上のキャンペーンや懸賞に応募するために、自主的な意思にもとづく内容で投稿する場合を挙げています。逆に言えば、投稿の文面を事業者が細かく指定したり、良い評価を書くよう求めたりすると、自主的な意思による内容とは言いにくくなります。応募条件は「指定ハッシュタグを付けて投稿」程度にとどめ、感想の中身は参加者に任せるのが無難です。
違反した場合、消費者庁は調査のうえ、再発防止策の実施や、今後同様の違反行為を行わないことなどを命じる「措置命令」を出します。なお、課徴金納付命令は不当表示が対象とされています。違反の事実が認められなくても、違反のおそれがある行為には指導が行われる仕組みです。都道府県知事も措置命令の権限を持っているため、地域の小さな企画でも対象外ではありません。判断に迷う企画は、事前に消費者庁や都道府県の相談窓口、弁護士に相談しておくと安心です。
まとめ:SNSキャンペーンの景品を決める前の5つの確認
SNSキャンペーンの景品は、企画の組み立て方しだいで上限がかかるかどうかが変わります。景品を発注する前に、次の5点を確認しておきましょう。
- フォローや「いいね」だけで誰でも応募でき、景品を郵送する企画は、他に購入につながる事情がない限り景品規制の対象外。オープン懸賞には上限額の定めがない
- 商品写真の投稿で当選確率を上げる、商品パッケージに応募要領を載せる、受け取りに来店や購入が必要、といった条件があると一般懸賞や総付景品の規制がかかる
- 一般懸賞は取引価額5,000円未満なら20倍、5,000円以上なら10万円が最高額で、総額は売上予定総額の2%。総付景品は1,000円未満なら200円、1,000円以上なら2割が上限
- 取引価額は受け取りに必要な最低の取引額で、来店のみや購入額を問わない企画は原則100円。景品の価額も消費税込みの市価で考え、抽選の値引券は一般懸賞の扱いになる
- 告知した当選者数は守り、応募規約に条件や優先の有無を明記する。投稿の中身は参加者に任せ、業種別の告示がないかも確認する
まずは企画書に「応募」「当選」「受け取り」の3つの段階を書き出し、それぞれで購入や来店が必要になっていないかを点検してみてください。どこかに取引が入るなら、その段階で取引価額を決め、最高額と総額の両方を計算してから景品を選ぶのが確実です。